今年の夏、手塚治虫の「火の鳥」、「ブラックジャック」、「陽だまりの樹」、「きりひと賛歌」、「シュマリ」を読んだ。「火の鳥」は以前に完読しているが、後の4作は、雑誌連載中に部分的に読んだだけで、今回初めて通読した。手塚治虫が最も優れているのは、ストーリーテリングで、単行本でまとめて読むと、面白さがわかる。手塚治虫は、最も忙しい時期でも、映画を年365本見て、あらゆる漫画雑誌に目を通すなど知識欲が旺盛だった。この膨大な知識の累積が創作の源だろう。斬新なアイデアよりも、職人技を感じさせる漫画家である。5作とも時間をかけて読む価値のある作品である。