円錐角膜は、非炎症性に角膜中央部が薄くなり、前方へ円錐状に突出する原因不明の疾患である。漫画家原哲夫さんは片目が円錐角膜で、患った眼を閉じて漫画を描いている。原さんの代表作「北斗の拳」は25年前の作品だが、漫画を読まなくなっていた私も少年ジャンプの連載に引き付けられた思い出がある。印象深い登場人物にラオウとレイがいる。レイは南斗水鳥拳の達人で、妹アイリをさらった「胸に7つの傷のある男」に復讐を誓うが、同じ傷のあるケンシロウとは友情を結ぶ。ケンシロウを助けるためラオウと対決するが、敗れて余命いくばくもなくなる。最後の余命を使って、同僚マミヤを助けるため南斗聖拳のユダを倒して絶命する。ラオウは北斗4兄弟の長男で、北斗神拳の後継者にケンシロウが選ばれたことに反発し、自ら拳王を名乗り世界支配に乗り出す。ケンシロウを支持する北斗4兄弟の次男トキと対決するが、勝利をおさめても実の弟であるトキへの思いやりからとどめをさすことができない。非情の拳を完成させるためケンシロウの恋人ユリアを殺そうとするが、心の中ではユリアを愛しているため殺すことができない。自ら死を覚悟して、ケンシロウとの最後の対決に赴く。ラオウが登場するのは作品全体の三分の一程度、レイにいたっては九分の一程度だが、主人公ケンシロウ以上に印象深い。ラオウの死以後の作品は、焼き直しが多く精彩を欠く。この作品以後ユリア、アイリに当て字をつけた名前の女の子が急増したのも、親が愛読者だったからだろう。原さんと私は、中央線の吉祥寺に住む同郷である。原さん、これからも健康に注意して優れた作品をお願いします。