リオ五輪まであと1か月である。最近はオリンピックも関心が薄く、テレビもあまり見なくなった。だが、今回は1人のアスリートに急に関心が出てきた。そのアスリートは、体操の内村選手でも、水泳の萩野選手でも無く、女子陸上の長距離ランナー鈴木亜由子さんである。亜由子さんは、中学2年で全国中学陸上競技大会の800m走と1500m走で優勝、中学3年でも1500m走で優勝したエリート中学生ランナーだった。エリートランナーはほとんどスポーツの名門高校に進むが、亜由子さんは、地元の愛知県立時習館高校に進学する。時習館高校の平成27年度の進学実績を見ると、東京大学に10人、京都大学に12人、名古屋大学に35人、浜松医科大学に5人が進学しており、名門進学校である。亜由子さん自身が学業優秀で、スポーツよりも学業を優先する家庭の方針だったのだろう。高校時代は怪我に苦しみ、疲労骨折を2回経験し、3年のインターハイで3000m走8位が目立った成績である。中学時代の無理がたたり、中学エリートランナーが高校で怪我をして消えてしまう例は多い。だが亜由子さんは何とか持ちこたえた。亜由子さんは「回りの人の支えのおかげです。」と謙虚に語っているようだが、一番は本人の精神力の強さだろう。3年まで競技を続けていたのにもかかわらず、亜由子さんは現役で旧帝大名古屋大学経済学部に進学する。ここでもスポーツより学業を優先した選択をしている。大学時代は、4年生時にユニバーシアードで10000m走金、5000m走銀をとるなど活躍した。ただし日本女子長距離は大学生よりも実業団のほうがレベルが高い。大学時代の亜由子さんの記録も実業団のトップクラスよりは低い。2014年名古屋大学経済学部を卒業し、スポーツでも活躍した亜由子さんは、競技は大学で終了しても、一流企業に就職できただろう。だが亜由子さんは陸上競技を実業団で継続する道を選んだ。選んだのは、名門実業団ではなく、新設の日本郵政陸上部の一期生である。亜由子さんはここで初めてスポーツを優先した選択をしたが、競技者としてやり残したことがあると感じ、自ら道を切り開こうとしたのだろう。